【スピカデザインの業界分析】アニメ業界について
Asai
2023.11.14
スピカデザイン アシスタントディレクターの浅井です。
今回は業界分析シリーズとして「アニメ業界」について分析していきます。
アニメ業界の概要や抱えている課題、トピックなどを紹介していきます。
最後までご覧いただければ幸いです!
目次
アニメ業界とは
まず、アニメ業界と聞いて一般的に思い浮かぶ職業は以下が挙げられます。
- アニメーター
- 声優
- CGアニメーター
- キャラクターデザイナー
- 背景美術
- 色彩設定師
- アニメプロデューサー
- 脚本家
- 制作進行
アニメ業界にはアニメ作品に付随する産業も該当します。例えばアニメソングのライブイベントやオフラインイベントの企画・主催、アニメキャラクターのグッズ展開、企業とのコラボ企画なども、アニメ業界の職業に含まれます。
アニメ業界の仕組み
アニメ製作におけるビジネスモデルは主に2つあります。
広告収入方式
この方式では、放送局がアニメの放映権を買い、アニメが放送されてるときに流れるCMの広告収入から原資を得てアニメが製作される方式です。
この方式は1990年代前半まで主流の方式でした。
例を挙げると、「ドラえもん」や「ONE PIECE」、「名探偵コナン」など日本を代表するアニメがあります。この例に挙げたアニメに共通している部分は、テレビを視聴する人が多い曜日や時間帯に放映されているアニメだということです。
この方式のアニメは、広告収入から製作費を得ているので、広告であるCMが視聴される機会の多いタイミングで放映されるのも納得できます。
製作委員会方式
この方式では、アニメ製作の原資が「製作委員会」と呼ばれる、複数の会社から構成される組織から出資されている方式です。よくアニメのオープニングの最後に「製作 ○○製作委員会」という文字が出るのを見たことがありませんか?それがこの方式で製作されているアニメの特徴です。
最近のアニメ(特に深夜アニメ)は、この製作委員会方式が主流となっています。
製作委員会の組織は、主に以下の企業によって構成されています。
- 放送会社(テレビ東京やフジテレビなど)
- 出版社(集英社、KADOKAWAなど)
- 広告代理店(電通、博報堂など)
- レコード会社
- アニメ企画会社
- 映画配給会社
- 映像制作会社
- ゲームメーカー
- 芸能事務所
- キャラクターグッズ製造メーカー
- おもちゃメーカー
- アパレルメーカー
- アニメ制作会社が所属するケースもあり
何故、最近のアニメはこの方式が主流になっているのか。それは資金調達がしやすく、リスクを分散できることにあります。
アニメを製作するのには1話あたり約2000万円近くかかります。これを1クール分(12話)となると約2~3億円ほどかかるのです。この多額の資金を1社で負担するのは非常に大変ですが、複数の会社で負担し合えば、各々の出資額が減るという訳です。
それと同時にアニメの人気や売上が想定よりも伸びずにこけてしまった場合に生じる損失も、会社に分散されるのでリスクを抑えることに繋がるのです。
また、前の見出しで挙げたアニメに付随した産業に関しても、製作委員会の組織内にそれらの事業に携わる企業が所属していることが多いので、アニメ作品の二次利用による売上の相乗効果を見込めることも大きなメリットになります。二次利用の産業が成功すれば、製作委員会に所属している組織の収益増加にも繋がることが期待できます。
アニメ業界の現状のトピック
よくアニメ業界に携わる職種、特にアニメーターは「低賃金」で「長時間労働」というイメージがある人は多いのではないでしょうか。
事実、近年はアニメーターの「低賃金」・「長時間労働」の問題がよくあがります。長時間労働に関してはクリエイティブな職種なので、作品を完成させる都合上しょうがないと言えばしょうがない部分と言えます。(それでも海外と比べて、日本はクオリティを重視しすぎている傾向にある。)
ですが、低賃金労働の問題はまた別です。この低賃金労働問題の原因には、先ほど挙げた「製作委員会方式」が大きく関わっています。
製作委員会方式をとると、製作委員会に所属する各企業に、出資額の比率に応じたリターンが渡ります。この製作委員会にアニメ制作会社も所属していればリターンを受け取れますが、もし所属していなかった場合はこのリターンを受け取ることはできず、「制作費」としての報酬が支払われるだけです。
製作委員会方式では、アニメ作品の版権が製作委員会にあるため、もし製作委員会に所属していなければ、作品が大ヒットしたとしても、ヒットした分の上乗せの収益を受け取ることができません。
これが、アニメ制作会社が儲からず、作品そのものを作る、現場で働くクリエイターが儲からない大きな要因です。悪い言い方になってしまいますが、アニメーターはいわゆる「やりがい搾取」をさせられている労働環境に置かれていると言えます。
現場で実際に作品を作っているクリエイターたちが限界という今の状態が続けば、いつかアニメ業界は崩壊してしまうかもしれません。
アニメ業界が今後、実際にアニメを制作するクリエイターたちに寄り添った体制作りを、どのように実現していくのか、注目してみたいところです。
アニメ業界の有名な企業
アニメ業界では、製作・配給・興行と3つの部門に大きく分けれます。
製作や配給だと「KADOKAWA」、興行だと映画館の運営を行う「東京テアトル」などが挙げられますが、ここでは上の見出しでも取り上げた「アニメ制作会社」に注目して紹介していきます。
東映アニメーション
代表作品
「ONE PIECE」、「ドラゴンボール」、「プリキュア」、「銀河鉄道999」、「スラムダンク」
日本を代表するアニメ作品に多く携わっている制作会社です。
アニメを企画・製作し、放送・公開・販売・配信等の展開を自社で行っています。
また、版権事業や商品販売事業、イベント事業も行っており、アニメーションビジネスで幅広く展開しています。
事業展開の幅広さからアニメ作品の劇場版も多く展開しており、特に2022年に公開された「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」、「ONE PIECE FILM RED」、「THE FIRST SLAM DUNK」はいずれも大ヒットを記録し、好調な業績を残しています。
スタジオジブリ
代表作品
「千と千尋の神隠し」、「となりのトトロ」、「天空の城ラピュタ」、「もののけ姫」、「風の谷のナウシカ」、「猫の恩返し」、「魔女の宅急便」、「紅の豚」、「ハウルの動く城」、「風立ちぬ」
日本を代表するアニメ制作会社と言えばここではないでしょうか。日本人の大半が、上記に挙げた作品を一度は見たことがあるのではないでしょうか。国内のみならず海外においても高い知名度があり、多くの大ヒットアニメーション映画を生み出しています。
スタジオジブリの作品は、非常にこだわられたアニメーション、緻密で美しい描写などで、印象深く物語の世界観を表現しています。
作品のテーマやメッセージ性が、見ている人に伝わる、感じ取れるような映像表現も魅力の一つではないでしょうか。
ユーフォーテーブル
代表作品
「鬼滅の刃」、「Fate/Zero」、「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」、「空の境界」
日本のみならず、海外でも絶大な人気を誇り、大ヒットを記録した「鬼滅の刃」のアニメを制作した会社です。
アニメの鬼滅の刃を見たことがある方なら想像しやすいと思いますが、同会社は作画、撮影、3DCGを駆使し、クオリティが非常に高い映像のアニメーションを提供しています。
また、原作へのリスペクトが強いことで有名で、鬼滅の刃やFateシリーズなど、ファンの期待を上回る映像表現で原作ファンやアニメファンから高い評価を得ています。
基本アニメ制作会社は複数の作品を、外注も兼ね合いながら同時に制作を進めますが、同会社は1つの作品を全社一丸となって制作するそうです。
アニメ業界をWebでプロモーションするなら?
SNSの活用
すでに多くのアニメ作品で行われていますが、アニメ作品の公式SNSアカウントを作成し、情報発信を行うのが、やはり有効な施策でしょう。
SNSユーザーへの認知の拡大や作品情報やイベント情報の発信など、幅広く活用できます。
例えば「呪術廻戦」のアニメ公式Xでは、予告動画や紹介文章、ハッシュタグを載せて告知ポストをしています。飲食店とのコラボ企画に関連する情報の拡散もしていますね。
また、作品に関連するハッシュタグを付けると、作品の主人公である「虎杖悠仁」のアイコンが表示されるようになっています。ハッシュタグを使ってみたくなりますし、ポストのビジュアルも映えてとても良い感じになりますね!
Xの機能を最大限に活用して、作品の情報拡散を図るのが有効的なプロモーションでしょう。
オフィシャルウェブサイトの活用
こちらもすでに多くのアニメ作品で行われていますが、オフィシャルウェブサイトを設立し、アニメの詳細情報、キャスト・スタッフ情報、壁紙、動画などを提供するのも有効な施策です。
ここでもアニメ「呪術廻戦」のオフィシャルウェブサイトの例を見てみましょう。
作品に関するニュースやイントロダクション、放送された各話の一覧ページがあります。
また、アニメ作品のウェブサイトに多く共通しているのが、「キャラクターページ」と「スタッフ・キャストページ」があることです。完全に私情ですが、僕はこういったキャラクターページを見るの何故だか大好きです。
他にも、アニメ作品の❝二次利用❞を目的とした「グッズページ」や「Blu-ray/DVDページ」、原作漫画を並べた「コミックページ」、アニメの主題歌やエンディング曲を紹介する「ミュージックページ」もあり、作品の売上を最大化させるためにウェブサイトを有効活用していることが分かりますね。
まとめ
スピカデザインの業界分析として、今回はアニメ業界について分析しました。いかがでしたでしょうか。
アニメ作品は多くの会社が関わり生まれています。
一度エンドロールで関わっている会社や人たちに注目してみるのも良いのではないでしょうか。
ただ、低賃金労働問題など、そのままにしておいてはならない問題もあります。
アニメは今や世界からも人気を集めている、日本の代表的なコンテンツです。そのコンテンツを支えているクリエイターは日本の宝とも言えるでしょう。
クリエイターたちが作品を生み出すのに十分な環境になるためにも、問題の早期解決を願うばかりです。