「顧客の想像力を刺激する」という言葉を選ぶまで

採用資料を作り直しました。西村です。
会社概要から理念、事業、事例、組織体制、職種ごとの仕事内容まで、全部で32枚あります。
面接で毎回口頭で説明していたことを、先に読んでもらえる形にしたかったので。
ただ、資料って結論しか載らないんですよね。
ミッションはこれです、バリューはこれです、と、決まったあとの形だけが並びます。
その手前にあった話——なぜその言葉にしたのか、何を選ばなかったのか——は全部落ちてしまう。
このシリーズでは、そこを書こうと思います。1本目は理念について。
もくじ
主語を、お客さま側に置きました
スピカデザインのミッションはこれです。
クリエイティブで顧客の想像力を刺激する
引っかかりどころは「刺激する」という言葉だと思っています。
デザイン会社のミッションって、たいてい主語が自分たちになります。
私たちが作る、私たちが届ける、私たちが解決する。
書きやすいですし、間違ってもいない。
ただ、うちの仕事を振り返ってみると、いい結果が出たときはだいたいお客さま側が動いています。
サイトを作ったから売上が伸びた、というより、
作る過程でお客さまが自社の見せ方を考え直して、その結果として何かが変わっています。
デザインが直接何かを変えるというより、
デザインがお客さまの想像力に火をつけて、その人が変えている。
だから主語をお客さま側に寄せて、「刺激する」で止めました。
私たちが変えます、とは書かなかった。
これは謙遜ではなくて、役割の定義の問題だと思っています。
自分たちが変えるつもりでいると、お客さまが動かなかったときに手詰まりになるので。
最初から「動くのはお客さま」と置いておけば、
じゃあどうすれば動くのか、という方向に頭が向きます。
バリューが全部「お客さまのセリフ」になっている理由
バリューは5つあります。資料にはこう書いてあります。
- 「さすが」と言われる対応力
- 「知らなかった」と言われる情報力
- 「すごい」と言われるスピード力
- 「センスある」と言われる技術力
- 「そうなんだ」と言われる企画力
見てのとおり、全部お客さまのセリフの形をしています。
これは意図的にそうしました。
「対応力を大事にします」と書くと、対応力があるかどうかを自分たちで判断できてしまう。
「さすがと言われる対応力」と書けば、判定するのはお客さまになります。
うちは、お客さまからお褒めの言葉をいただくことを成果指標のひとつとして扱っています。
数字だけを見ていると、納品が終わった瞬間に評価が確定してしまうんですよね。
でも実際は、納品したあとに「あれ良かったよ」と言われるかどうかで、次の仕事が決まります。
順番にも意味があります。
技術力が4番目にあることに引っかかる人がいるかもしれません。
デザイン会社なのに技術が4番目か、と。
これは優先順位というより、技術力だけでは差がつきにくくなったという現実に近いです。
きれいなものを作れる人は増えましたし、道具も良くなりました。
その前提の上で何を足せるかというと、対応の速さだったり、
業界を知っているから出せる情報だったりします。
技術がいらないという話では、まったくないです。
技術は前提で、差がつくのはその周り。そういう順番になっています。
「視点を変えれば、未来が変わる。」
ブランドコンセプトはこの一文です。
ミッションが自分たちの立ち位置を定義する言葉だとすると、
こちらはお客さまとの約束にあたります。資料にはこう続けて書いてあります。
きっとアイデアはもっとある。
自分の常識は疑った方がいい。
「できない理由」を語るより、「できるため」の話をしよう。
3行目が本題だと思っています。
制作の現場では「できない理由」がいくらでも出てきます。
予算が、期間が、素材が、レギュレーションが。
どれも事実で、どれも正しい。正しいから厄介なんですよね。
正しい理由を並べているあいだ、誰も前に進んでいません。
そこで「じゃあどうするか」を先に置けるかどうかで、
出てくるアウトプットが変わります。
これはお客さまに向けた言葉でもあるんですが、
実際のところは自分たちへの戒めとして書いている割合のほうが大きい気がします。
理念は、面接で確かめています
採用ページの「採用方針」に、理念への共感という項目を置いています。
建前ではなくて、実際に面接でここを一番見ています。
スキルは入社後に伸びます。伸びる速度に差はありますが、伸びないということはない。
でも「できない理由から話し始める人」が「できるための話から始める人」に変わるのは、
かなり難しいです。少なくとも数ヶ月では変わらない。
採用方針に「人間性>スキル」と書いているのは、そういう意味です。
性格がいい人を採りたいという話ではなくて、
理念と同じ方向を向いていないと、一緒に仕事をするのがしんどくなるという、
もっと実務的な話に近いです。
次回は「全員ディレクター思考」について書きます。
資料の中で一番誤解されやすいと思っている章で、
AIの話とセットで書かないと意味が伝わらない気がしているので。
採用資料は採用ページから読めます。
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