「全員ディレクター思考」は、作るなという意味ではない

採用資料の「会社の文化」の章に、3つの言葉を置きました。
- 全員ディレクター思考
- クリエイティブに妥協しない
- 挑戦を恐れない
2つ目と3つ目は、まあ、わりとどこの会社でも見る言葉だと思います。
問題は1つ目でした。
もくじ
「デザイナーは作らなくていい」に読めてしまう
スライドにはこう書いてあります。
AI時代に人がやるべき仕事は企画提案と品質管理
「作ること」ではなく「作るものを決めること」に価値が宿る
社内メンバーは価値の高い仕事にフォーカスする
これだけ読むと「手を動かすな」と言われているように見えます。
デザイナーとして入った人からすれば、いい気持ちはしないと思います。
なので補足します。作るなという話ではないです。
作ることの前後にある判断を、他人任せにするなという話。
ディレクターというのは職種ではなく動詞です
うちにはクリエイティブディレクターという職種があります。
責任対象は進行管理・納品・品質・収支。制作の責任者です。
でも「ディレクター思考」と言うときの意味は、その職種のことではありません。
デザインを1本作るとき、どこかで誰かがこう決めています。
何を伝えるか。誰に向けるか。どこを捨てるか。いつまでに、いくらで作るか。
この判断が全部上から降ってきて、自分は言われたとおりに手を動かすだけ、
という状態になった瞬間に、その仕事の価値は「手の速さ」に還元されます。
そして手の速さは、いま、機械のほうが速い。
資料に載せた、あのグラフの話
組織体制の章に、縦軸が品質、横軸が時間のグラフを1枚入れました。
左に「企画」、右に「品質管理」があって、
その間が「閃き」「量産」「匠」という言葉で区切ってあります。
真ん中の「量産」のところに、点線でこう書いてあります。
・AI生成
・AIエージェント
・外部パートナーとの連携
つまり、真ん中は外に出せるという図です。
そして両端——最初の閃きと、最後の匠——が社内メンバーの仕事として残ります。
この図を作ったとき、自分でもけっこう身も蓋もないなと思いました。
でも実際の制作フローを工程に分解していくと、どうしてもそうなるので。
誤解のないように書いておくと、これは
「量産は価値が低い」という意味ではありません。
社内の人間が時間を使う場所として最適ではない、という配分の話をしています。
「品質管理」を人が持ち続ける理由
面白いのは、外に出す範囲を広げるほど品質管理の重要度が上がることです。
量産の部分を機械や外部に出すと、手は空きます。
でも出てきたものが良いか悪いかを判断する仕事は、むしろ増える。
しかも判断の回数が増えるぶん、判断の質がそのまま成果物の質になります。
「いいものを作る」というのがうちの大前提で、
資料にはその定義まで書いてあります。
いいものというのは
お客さまに喜ばれるもの
これは自分たちが良いと思うもの、ではありません。
なので、判断するにはお客さまと業界を知っている必要があります。
そこはまだ機械には渡せていません。
渡せる日が来るのかもしれませんが、少なくともいまではない。
「全員ディレクター思考」が指しているのは、要するにここです。
職種が何であれ、この判断の側に立てるかどうか。
「挑戦を恐れない」は根性論ではないです
3つ目の言葉についても書いておきます。資料にはこうあります。
どんな仕事でもやり切った先に結果があり、
それをもって次のステップに進むことができる
試行回数は多い方が良いので、いかに最短時間で進められるか
期待を超える行動量には自ずと結果はついてくる
「行動量」という言葉が出てくるので、
根性論に見えるかもしれません。書いたあとで少し気になりました。
ただ、前の行に「いかに最短時間で進められるか」と書いてあります。
ここが本体だと思っています。
長時間やれという話ではなく、1回あたりを短くして回数を増やすという話です。
そしてこれは、さっきのAIの話と地続きになっています。
量産を外に出せるなら、1回あたりのサイクルは短くできます。
短くできるなら、試行回数は増やせます。
3つの言葉はバラバラに並んでいるように見えるかもしれませんが、
実際には「全員ディレクター思考」を成立させるための条件として、
残り2つが置かれている。そういう構造になっています。
次回は組織体制について書きます。
集客・受注・制作の3軸という話と、
なぜ制作チームを社内に持ち続けているのか、という話をする予定です。
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